万引きをし始めて、何度も逮捕・服役して、それでもなかなか治療に繋がらなかった。
万引きをし始めた頃は
「やる」という意識を持ってやっていた。
始めた頃・・・
自分にとってはすごく短い期間だったと思う。
自分は大抵のことはすぐに「習慣化」したり、「習慣に組み込む」ということをしていた。
それが自分にとっての自然体だった。
新しくやること、試みること、というのは考えて行動する必要がある。
しかし、それを一度成功すると、成功したやり方というのを覚えて、その通りにやるだけ。繰り返すだけ。
そうなる。
そして、そういうものが沢山あったし、今もある。
万引きも、やる店舗は違っても、だいたいやることは同じ。
全く違う業態とか、全く違う販売形態の店でやる時は、「自然に」やることはできないで、新鮮な1回目という感じである。
しかし、だいたい同じことを繰り返す習性があるので、
同じような(例えば、コンビニ、スーパー、本屋・・・)などで機械的に繰り返し万引きをするようになっていた。
機械的だし、習慣的なので、
目的とか手段とか方法は特に考えない。
考えなくても、
自然と段取りを整えて、現場へ行って、万引きを実行できてしまっていた。
習慣化してから、店に捕まった。
捕まって、保護者(親)に知られることになって、
やめなければならない、と意識した。
(捕まるまではやめなければならない、と意識することもなかった。)
だが、習慣化してしまった状態の後なので、
まだ1回2回(1日や2日など)くらいなら
「やってはいけない」家にいる時からずっとそう思い続けていれば、なんとかこらえること(万引きをしないですむ)ことはできていたと思う。
それすらも、数日ももたない。
やらないと苦しくなってしまうのである。(表現が難しいが・・・)
ずっと便秘で気持ち悪いとか、ずっと呼吸を止めているような苦しさとか、
そういうものを感じるようになって、
もう我慢ができなくなって、やってしまっていた。
反省はしていたし、やめなければならないと思ってはいたが
この頃はまだ、「甘く考えている」部分が少しはあったと思う。
そして、結局再犯することになる。
再犯してしまうと、また、歯止めが効かなくなり、異常なまでに繰り返し繰り返し続ける。
そして逮捕される。
逮捕されて、やめなければならないと意識する。
平常時には、やめる、と意識できるのだが、もう止めることができない。
やめる という意識が続かない。
仮にずっと46時中、この意識が切れることがなければ、万引きをしないで済んだかもしれないが、
人間にはそんなことは不可能だと思う。
ぼーっとしたり、眠ることもある。
少しでも、やめるという意識、ではないことに意識が向くと、もうやる方向に動き出していた。
家を出る前から、自然と万引きをする段取り(心や体、荷物や服装)を整えて家を出るのである。
そして、やるのである。
そうやって逮捕されることが繰り返されると、次第に送検されるようになった。
留置場での勾留もあった。
起訴猶予で釈放されたり、処分保留で釈放されたりした時
それまでとは違う、恐怖みたいなものを感じていた。
万引きをして逮捕されると、恐ろしいことになる。。。
だからやってはいけない。
勾留されることがなかった時とは比較にならないほど、強く思った。
もうこの頃は「甘く考えている」ということはなかった。
そして、しばらくは万引きをなんとかやめようとしていた。
心療内科に行って万引きの相談などをしたりもした。
(しかし、窃盗症とか病的窃盗とかをわかる医師に巡り会うことはできず、うつ病の薬を処方されて服薬するだけだった。)
処分保留で在宅で取り調べだったものが、3ヶ月くらいで不起訴になった。
そうしたら、それまでなんとか我慢していたものが限界に達したのか、緊張の糸が切れたのか・・・・
万引きをまたしてしまった。
そこで1回してしまったら、また止まらなくなった。
「甘く考えていない」「重大・深刻だと考えている」
それなのにやってしまっていた。
そして、逮捕されるまで、ずっとやり続けた。
様態もどんどん粗っぽく雑になっていった。
そして、また逮捕されて勾留されて、在宅に切り替わった。
在宅に切り替わって釈放された時は、もう数日我慢することもできなくなっていた。
略式起訴で罰金刑となった。
その前後も万引きを続けていた。
そして、また逮捕。
これも在宅調べで釈放。釈放されてすぐに万引きをしていた。
この件が終わる前に、また新たに逮捕された。それも在宅調べになった。
そしてさらに万引きを続けて、もう1件で逮捕された。
これで合計3件。。。
ここで在宅調べではなく、勾留されて20日目で起訴された。
起訴されて保釈されて、裁判を受けた。
この件は、執行猶予付きの懲役刑になった。
この保釈・裁判の間も万引きをしていた。保釈で外に出て家に帰るまでにやっていた。
執行猶予3年の判決だったが、判決の数ヶ月後には再逮捕された。
その判決がでる前からやっていたし。。。
そして、勾留されて起訴されて、保釈請求は却下されて、
2刑の合計で3年の懲役刑。
裁判で6ヶ月、未決通算3ヶ月弱、仮釈放6ヶ月、
拘置所と刑務所と合わせて2年6ヶ月くらいだった。
その間、万引きはできないからしていない。
これだけの期間を万引きしないで過ごしたら、何か変わるかもしれない(万引きしないで大丈夫になっているかもしれない)と思っていたが、
全然そんなことはなかった。
仮釈放されたその日のうちに、家に帰るまでに、保護観察所へ行くまでに、万引きしていた。
そして、また万引きを繰り返した。
仮釈放を満了することなく、逮捕されて、
仮釈放も取り消し。新たな事件でも実刑判決。
合計で1年8ヶ月。
刑務所で服役しても、やめられるようにはならなかった。
2回目の刑務所から出所後、またその日のうちに万引きした。
そしてまた繰り返した。
就職もして、収入もかなりあって、一人暮らしを始めて・・・・
ここで万引きをしたら、全てを失うということも理解していた。
だが、また万引きを続けてしまっていた。
やった後とかには、自己嫌悪ややってはいけないことはわかるし意識するのだが、
また自然とやる方向に動いてしまうのである。
自然と動いてしまうものを止めることができないでいた。
そしてまた逮捕。
今度は常習累犯窃盗で3年。
裁判で1年、未決通算で5ヶ月強、仮釈放3ヶ月弱、
拘置所と刑務所で合計3年2ヶ月くらい。
そして出所。やっぱりやめられなかった。
仕事をして、仕事内容も収入も、人間関係も、それなりに充実していた。
それなのにやめられなかった。
辛いことがあったから、嫌なことがあったから、・・・
もうそういうこととは別の軸で万引きするようになっていた。
万引きをしなければ1日が始まらない。万引きをしなければ1日が終わらない。
途中でも万引きをしなければ・・・・
そんな状態だった。
そしてまた逮捕。
そこそこ充実した生活をしていたのに(それ以前は、辛いことが多かったのに比べて)、
それなのにやり続けていた。やめられなかった。
自分でもなんでやってしまうのかわからなかった。
どうやってやめるのかわからなかった。
やめられないと思った。
それまでは入院治療はしたことがなかった。
自由がなくなる。仕事ができなくなる。・・・
入院したくない理由はいくつもあったから。
だが、今回は、もうそんなことを言っている場合ではない、
自力ではやめることはできない。それくらい異常なのだと自覚した。
どうせ実刑になることはわかっていた。
入院前提でなければ保釈も通らない。
裁判中(拘置所)にいても、治療は受けられない。拘置所も不自由。
同じ不自由なら、治療ができる方がいい。
そんなことも考えていた。
それでやっと入院申込などをして、保釈請求をして、保釈が許可された。
しかし、病院のベッドの空きがなかったため、
入院待ちの状態が続いた。
しかも、いつ空くのか、いつ入院できるのか、わからない。
これがものすごく不安だった。
保釈後1週間くらいして、また万引きをし始めていた。
どんなにやめようと思っていても、やめられなかった。。。
そして、また逮捕・勾留された。
勾留20日間の間に簡易鑑定を受けさせられたりした。示談が成立した。
勾留満期で、とりあえず処分保留で釈放されて(数ヶ月後に不起訴となった)
警察署からそのまま車に乗って病院へ直行して入院した。
やっと入院治療にたどり着いた。
2018年12月から2019年3月まで、3ヶ月間入院。
退院後は毎月の通院と、自分一人で社会内でやる治療を継続中。