刑務所での過食
炊場で服役している時期があり、そこで過食していた。
普通、懲役といえば食べられる量は決まっているので(誰かのものをもらって多く食べる人もいるが)、有り得ないと思われるかもしれないが・・・
配役直後は、作業が体力的にキツすぎて、ほとんど食べられなくて、2、3日で5キロくらい落ちた(55kg→50kg)。しかし徐々に慣れてくると、食べられるようになって、少し復活した(50kg→52kg)。
炊場の工場でご飯を食べる時、だいたいいつも正規の量よりかなり多く出される。
- 正規の量 カレー360g + ご飯 370g
- 炊場の量 カレー1kg + ご飯 1kg → なんと合計2kg。カレーとかシチューの度に大体こうなる。
無制限におかわり自由みたいなこともあった。
正規の量で十分でそれ以上食べたくないのに、
俺の作ったものが食えないのか、
とか言う人が結構いたりして、無理にでも食べないといけない雰囲気があって、仕方なく多く食べることがあった。
無理やりたくさん食べているうちに、徐々に食欲が暴走し始めた。
つまみ食いをしている人もたくさんいたので、自分もするようになった。
つまみ食いだけで、肉を1kgくらい食べたり、しかも噛まずにほとんど流し込んで・・・本当に酷かった。
しかもその頃、勤勉に勤めている方の姿が評価されて、井川なら大丈夫みたいに言われて、ちょっと特別な作業を与えられた。
その作業は、特別な小部屋の中でやる作業で、
- 担当台から見えない。
- 監視カメラもない。
- 調理用具(包丁、鍋、フライパンなど)も業務用のコンロもある。
- 部屋の中に冷蔵庫も冷凍庫もある。
- 部屋の外にある大きな冷凍室や冷蔵室への出入りも私は自由で、食材も自由に持ち出しできた。(管理者になっていたから)
- 扉付きの棚もある。
やりたい放題なのである。やりたい放題にしても、ちゃんとやると思われていたらしい。
しかし、そんなことはない。
食欲がすでに暴走してしまっていた私は、やりたい放題やっていた。つまみ食いしていた。
つまみ食いといっても、一口パクリみたいな可愛いものではない。業務用ポテトサラダの1kgの袋とか、冷凍のオクラ1kgとか、焼肉1kg以上とか、それを流し込むように。。。肉をつまみ食いした時は、バランスを取るために、さらに野菜を多くつまみ食したり。。。
本当に酷い。
そして2ヶ月くらいで体重はかなり増えていた。(52kg→65kg)
その後もしばらくその作業を続けて、この体重くらいで高止まりしていた。
体重が増えていたのもそうだが、バケモノ・怪物みたいに食べ物を食べている自分を止めたいのに止められなくて、苦しかった。
オヤジ(工場担当)に、直談判しに行った。
あの作業担当になっていると、つまみ食いをやめられない。自分では制御できない。だからもっと担当の目につく作業に変えて欲しい。
つまみ食い、というのは規則違反で、発覚したら懲罰になる。
それを覚悟での直談判。
しかし、オヤジは、変えてくれなかった。。。
何度か頼みに行ったが変えてくれなかった。
副担当にも頼みに行ったが、ダメだった。
そしてその後しばらく、つまみ食いを続けていた。涙は流していないが、泣きながら食べているような感じだった。
結局、自分では止められなかったし、
作業を変えてもらうこともできなくて、
悩みに悩み、作業拒否して懲罰を受けて、別の工場へ行くことにした。
新しい工場では、舎房配食をする工場だったが、オヤジに頼んでやらないで済むようにしてもらった。
それからの刑期は、正規の量を食べられた。
(食べるものがそれ以上ないから、正規の量を食べているだけで、これは摂食障害が治ったという訳ではない。盗めない環境だから盗んでいないというのと同じ。)