入院中にしていた治療、退院後の治療

お世話になっているTさん(何の依存症も持っていない人)から、治療って何をやってるの?って聞かれて回答するために書いたものを、折角なので残しておく。

 

省略したりしている部分もある。

ここに書いてあることは、必ずしも条件反射制御法について原文を正確に書いたものではない。依存症もなく治療を受けていないTさんに説明するために、私なりの解釈を、私なりに簡単に書いたものである。

 

ここから・・・・

(Tさんからの質問)

「退院後に続けていることは何かあるか? どのくらいの頻度で行なっているか?」

 

(私の回答)

まず入院中にやっていたことは以下です。

条件反射制御法は、独特ですしネットなどで読んでも難解だと思いますので、

私なりに簡単に、私の解釈を書きます。

 

全体を通しては、本能的な脳の回路を弱めて、理性の脳の回路を強めるということをします。

(本能の回路は、原始より続いているもので、生存に必要なもので、すごく力が強い。理性の力では対抗できない)

治療によって、理性の力を強くして、コントロール可能な状態にするという感じです。

 

ステージの順に進んでいきます。

 

第1ステージ 反射刺激(おまじない) 約20日間

 おまじない、というのは、ちょっとした動作をしながら言葉を言うものです。

 「私は、今、万引きをできない。大丈夫」と。

 

 何か問題行動を始めた当初は、それほどでもありませんが、依存状態になった後には習慣化しています。習慣化しているということは、日常生活の様々な動作や感情(不満や不安、ストレス、興奮、開放感・・・)、外部刺激(景色、匂い、音・・・)と問題行動が結びついています。

 そうなると、感情に特に何も変化がなくても、景色や匂いなどから問題行動がスタートするようになります。

 

 反射刺激(おまじない)と言うステージでは、刺激と問題行動とを切り離します。

 入院している閉鎖病棟では、絶対に問題行動はできません。その状態で、

 『おまじないをする』『問題行動をしなかった』

 (おまじないをするときには、その時々で場所を変えたり色々なものを見たりしてやります)

 と言うことを繰り返します。

 すると今度は、あらゆる刺激と「問題行動をしなかった」と言うものが関連づけられます。

 

 第1ステージではひたすらおまじないをします。1回やったとは最低20分程度の感覚をあけます。一つ一つをちゃんと区別して脳に刻んでいくためだと思います。

 1日に最低20回やります。

 

 

第2ステージ 擬似 約20日間

 過去に問題行動をして成功すると、生理的報酬と言うものを脳が感じています。

 万引きをして、成功した。覚醒剤を売って気持ちよかった。など。

 生理的報酬を得ると、脳はそれを繰り返すようになります。動物は生理的報酬を獲得することをして進化したり生きてきたから。食べて美味しいとか。。。

 

 擬似ステージでは、万引きっぽいことをして、失敗すると言うことを繰り返して、脳に「空振り」体験を刻み込みます。

 病院にある擬似べやといいうところに、商品の空箱がたくさん置いてあって、それを盗む真似をして部屋から出て、出た後それをまた元に戻すという作業を繰り返します。

 

 これを1日最低20回行います。

 

 そして、毎回毎回、やる前とやった後の感情や体の変化を記録します。

 (喉が乾く、頭が痛い、怖い、気持ち悪い。。。など)

 1回あたり5分とか10分かかります。

 

 おまじないの回数は減らします。10回くらい。

 

 

第3ステージ 想像 約20日間

 万引きをして、そして失敗する(空振り)。というシーンを想像します。

 ただ、店に入ってから、ではなく、朝起きてから万引きするまで全てをです。どの刺激が万引きにつながっていたかわからない(全てかもしれない)ので。

 見えたもの、景色、音、匂いなど、細かく思い出して想像します。最後は失敗(空振り)で終わらせます。

 想像で見えたものを20個書き出します。

 擬似と同様の記録を毎回します。

 1回あたり30分くらいかかります。

 1日に20回行います。

 

 おまじないは10回。

 擬似は5回に減らして、並行して行います。

 

第4ステージの準備 1週間

 よかったことの思い出し、

 辛かったことの思い出し、

   まず物心がついた頃からのよかったことと辛かったことを100個ずつ書き出してリストを作成します。

   そして、それぞれについて、1日5個のエピソードについて、そのエピソードを思い出して、頭の中で蘇った景色、音、人などのキーワードを20個書き出します。

 内観 内観をします。

 

 

第4ステージ 維持 1週間

 退院してから続ける作業を、退院前の1週間くらいでやり始めます。

 

 

退院後。。。維持

 退院後に維持作業をやり続けます。

 

 毎日です。

 おまじない 最低5回

 擬似 2回

  (退院後の擬似は、実際の店でやります。実際の店舗で実際の売り物を見ながら、手にとってまた元の商品棚に戻すという作業をやります。)

 想像 2回

 読み返し(良いこと辛いこと)2個ずつ

 内観

 その日の最大の出来事かく(一言日記みたいなもの)

 

 私は大体朝起きてから1時間とか1時間30分くらいかけて書き物をします。

 そして、空いた時間で店舗での擬似をしたりします。

 毎日2時間くらい、この維持作業に使っています。

 

 

 

 

どうして再犯しないかについて、私の思うところはいくつかあります。

・考えることができるようになった

 治療前は、店に入ったら(入る前から)スイッチが入ったようになり、半自動的に万引き完遂していました。その間に、何かを考えることはできていなかったと思います。(これは悪いことだ、やって捕まったら大変なことになるなど)

 擬似や想像を通して、万引きしているシーンの中で自分の体や心の状態を観察することを繰り返しました。この時点でどう感じているのか、ということを細かく。

 これによって、店に入ってから万引きを完遂するまで、細かい1動作1動作ごとに区切って動作と動作の間に思考や観察を挟む訓練ができたと思います。

 退院後に店に入っても、今自分が何をやっているのか、これからどうするのか、これは必要なものか、優先度はどうか、色々と思考を挟むことができるようになりました。

 

・維持を継続している。

 一旦依存症になると、完治する(全く元に戻る)ということは難しいと思います。

 入院治療によって、ある程度まで状態は落ち着いて理性でコントロールできるようになりますが、脳は昔の快楽を記憶しています。維持作業を怠ると、また悪い状態に戻ります。

 私は維持作業を毎日続けることで、状態を安定させることができているのかと思います。

 また、毎日やることで、ちゃんと治療に取り組んでいる、万引きしないためのことをしている、ということを確認して、それに向かって行動するようになっているとも思います。

 

ざっくり書くと(といってもかなり長いですが・・・)こんな感じだと思います。

 

 

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